野生動物撮影で活躍する撮影機材「自動撮影カメラ」
自動撮影カメラは(トレイルカメラ、センサーカメラ)として販売されています。
市販されている多くの自動撮影カメラは、センサーとカメラが一体化されている扱いやすいタイプ。
値段も一万円~五万円と比較的手ごろな価格になっています。
カメラ機能を考えただけでも、この金額は魅力です。
気になる画質は、野生動物調査には問題ありません。
夜間でも赤外線撮影が出来るので、知られざる野生動物の行動を知るには大きな武器になる機材です。
(人の動きも感知するので、防犯用にも使えます。)
しかし、カメラとセンサーが一体のタイプの写真を作品として考えると、クォリティは低いのが事実です。
野生動物の知られざる姿を綺麗な写真で残したい!
そんな想いでたどり着いたのが、自作の自動撮影装置です。
野生動物は多くが夜活動する
野生動物はヒトのいない地域では、昼夜問わず活動をしています。
しかし、ヒトとの距離が近い地域では、ヒトの寝静まった夜に野生動物は活動しており、私たちが目にする機会は殆んどありません。
でも、そんな知らない野生動物の姿を見てみたい!
見えないものを見たい。
単純な想いで作ったのが、自動撮影装置です。
24時間活動している野生動物を撮影するために、自動撮影装置は不眠不休です。
いつ出るかも分からない動物を文句も言わずに待っています。
設置してる私にも、24時間いつ野生動物が撮影されるかは正確には分かりません。
自動撮影装置は、朝、昼、雨、雪、夜、自然の様々な環境に耐えています。
雨や雪はカメラケースで対応出来ます。
でも、光が必要な写真は、夜の撮影に工夫が必要です。
夜間撮影には光が必須
自作した自動撮影装置は、市販されている一眼レフカメラを使います。
赤外線撮影は不可能なので、通常の撮影と同じく光が必要です。
野生動物撮影のフィールドの多くが、山や林。
草木が生い茂る環境が多いですが、太陽からの光とカメラの感度調整で撮影は可能です。
しかし、夜となると話は別。
最近のカメラは高感度に強くなりました。
しかしそれは、多少の光源があった場合の話。
野外の森や林の中には、光はありません。
まず、ゼロです。
そんな環境で写真を撮るには、ストロボで光を確保する必要なのです。
自動撮影用にストロボ作成をいただいた
野生動物撮影は趣味としては、かなりマニアックな分野です。
野生動物撮影の中でも野鳥撮影は人気ですが、広く野生動物となるとかなりマニアックな世界。
様々な撮影技術や機材、自然に対するノウハウが必要になります。
そんな野生動物撮影の中でも、私同様に自動撮影装置にチャレンジしている方もいます。
有名な方は「自然界の報道写真家 宮崎学」ですね。
「けもの道」「死」など、自動撮影を用いた素晴らしい作品の多い写真家です。
これらの作品に憧れて自動撮影装置にチャレンジした方も多いのではないでしょうか?
私もその一人です。
大学時代には、どうやったら「けもの道」「死」のような作品が撮れるのか。
作品を読み、研究をしました。
そんなこんなで、技術を磨きながらブログを続けていたのですが、今回は写真家の方から
自動撮影装置用のストロボ開発の依頼をいただきました。
市販のストロボの問題点
自動撮影装置は野外に設置したら、24時間待機です。
そのため、ストロボも24時間待機させる必要があります。
しかし、今のストロボの多くは、電池消耗を抑えるため、一定時間操作しないと自動で電源が切れてしまいます。
実は、この機能が自動撮影は大問題です。
だって、自動撮影装置の設置を終えて、離れたらストロボの電源が切れちゃうんです。
ヒトの操作が必要ないように自動撮影装置を使うのに、ストロボはOFF。
これでは、夜間の撮影が出来ません。
わざわざ、夜間にストロボの電源を入れに行くわけにもいかないし。
そもそも、操作を30分ほどしないと電源が切れてしまうので、電源を入れても動物が写る前にOFFになってしまいます。
つまり自動撮影装置では、自動で電源の落ちない、24時間待機可能なストロボが必須なんです。
自動撮影でストロボを使うには
自動撮影装置でストロボを使いたい場合に簡単な方法が、昔のストロボを使う事です。
昔のストロボは電源OFF機能がついていないので、常にストロボを待機させられます。
注意として
昔のストロボはシンクロ接点の電圧が高く、今のカメラで使用するとカメラが壊れる恐れがあります。
消費電力も多く、24時間待機させると電池が直ぐに終わってしまい、撮影時に電池切れの恐れもあります。
また、昔のストロボは、メーカーの修理期間が切れているので、壊れたらもうそのストロボが使えないのも問題です。
中古で常に同じストロボが出品されるとも限りません。
ならどうするか・・・
作ろう!
自動撮影装置で使えるようなストロボを作ればいいんです。
開発依頼が後押しとなって、ストロボを自作します。
自動撮影装置用のストロボを自作
0からストロボを全て作り上げる技術は私にはありません。
使い捨てカメラのストロボ基板を改造して、自動撮影装置でも使えるようにします。
使い捨てカメラの基板を改造
使い捨てカメラのストロボ基板は非常にシンプルな部品構成です。
そして、無駄のない基板。
電源OFF機能など、もちろん組み込まれていません。
このことを利用して、シンプルな改造をします。
まずは、電源。
元々は単四電池1本が電源です。
使い捨てカメラの基板は消費電力は大変少なく、一般のストロボに比べて、大変優秀です。
しかし、そのままでは、野外の長期間の待機には耐えられません。
そこで、電池容量を増やします。
今回は、ストロボのサイズや充電製を考慮して、並列で単三電池を2本に改造しました。
また、充電完了サインとなるLEDはどうしても電力を消費します。
このLEDを取り除けば話は早いですが、使い勝手を考えるとLEDは光った方がいいです。
そこで、抵抗値を増やしてLEDの光量を落し、電力消費を抑えるようにしました。
一番の改造はカメラとストロボを繋ぐシンクロ部分です。
元々の使い捨てカメラの基板では、この部分がDC200Vほどの高圧です。
今のカメラはシンクロ電圧に高圧を想定していないので、そのまま繋ぐとカメラが壊れる恐れがあります。
そんな怖い状態では使えませんので、使い捨てカメラの基板を改造する必要があります。
簡単に説明すると、回路を追加して、シンクロ電圧DC200VをDC5V以下にします。
この改造で、カメラに負担がないように使い捨てカメラのストロボを使えるようになります。
ストロボは三脚に固定してつけるとラクなので、三脚取り付けプレートも自作します。
市販の金属プレートの穴を加工した後、ナットを溶接します。
ナットのサイズはW1/4です。
ホームセンターに普通に売っているので、カメラ機材の自作には必須の部品です。
プレートの塗装を終えて、ケースに取り付ければ完成。
三脚に取り付けられるので、扱いやすくなります。
まとめ
自分で使うのではなく、初めて誰かのために機材を作りました。
ケースの選定や、配線、取り付け金具など、悩む部分は多かったですが、他人に渡しても恥ずかしくないクォリティに仕上げる楽しさを知れました。
後日、他の方からの依頼でスレーブ発光に対応したバージョンも作ってみました。