巣箱を作りたいあなたへ
「巣箱作りにチャレンジしたい。どんな野鳥が巣箱を使うの?巣箱を据え付ける時期はいつ?どんな道具が必要?木の種類は?子供と一緒に作れるかしら?」
こんな疑問に答えます。
巣箱を作って身近な野鳥観察【シジュウカラ編】
この記事を書いている私は、野生動物観察・撮影を10年以上。
なかなか見る事の出来ない、野生動物の観察・撮影のために機材を自作しています。
過去には狩猟免許も取得。
生物技術者の資格である、生物分類技能検定2級【動物部門】を持っています。
つまり自然や野生動物が大好き人間です。
あなたは知っていますか?
近年、野鳥界は住宅難と言われています。住宅難の原因として、生息環境の悪化が考えられています。
野鳥が暮らす周囲の環境が悪くなり、巣づくりができる場所が減少しているのです。
- 土手に巣を作るカワセミは、護岸工事による河川のコンクリート化により、営巣場所の確保が出来なくなっています。
- 森や林では、大木や老木が切られて減少しています。大木や老木には樹洞が数多くあり、大木・老木の減少は、樹洞で営巣する野鳥にダメージを与えているのです。
ヒトの住みやすい環境作りも大切ですが、野生動物への影響も知っていて損はないと思います。ヒトって「気づいたら絶滅してた。いつの間にか最後の1匹だった。」が得意ですからね。
複雑な環境問題については、一方的な見かたではなく、多面的な見かたが必要となります。考え方も複雑で、人それぞれの考えがります。正解はありません。もし、環境教育に興味がありましたら、検索してみて下さい。身近で感じる機会が少ないかもしれませんが、自然環境系にも、様々な資格や活動があります。
書籍はこちら:巣箱づくりから自然保護へ
さて今回は、そんな住宅難になっている野鳥へ住宅を提供するための記事です。
野鳥はもともと自然にあった場所を利用しています。しかし、住宅難となり、人工物を利用して力強く生きている種も少なくありません。
そんな野鳥をせっかくなら、身近に感じて欲しい。あわよくば、観察して欲しい。
巣箱づくりを切っ掛けとして、野鳥や野生動物、自然を好きな人が増えて欲しい。そんな思いから記事を書いていきます。
巣箱を利用する野鳥
巣箱について
巣箱を利用する鳥は決まっています。
簡単に言ってしまうと、樹洞などの穴に営巣する種類です。野鳥で穴と言えば、キツツキ類やフクロウが有名です。たしかに、フクロウなども巣箱を利用しますが、家の周りにフクロウが生息してる環境って少ないですよね。(そんな環境なら、私も住みたいです。)
フクロウは無理かもしれませんが、あなたの家でも、カラ類なら観察できるかも。カラ類は、家の庭や公園でも見られる身近な野鳥。あなたもこの姿を見たことあるのでは?
カラ類とは?
この「カラ類」とは、○○カラという名前の小鳥をさします。
「カラ類」の「カラ」は漢字だと「雀」と書きますが、雀(スズメ)は「カラ類」には含まれません。
スズメとシジュウカラは、目(モクと読みます。)までは同じ分類のスズメ目。
ですが、科(カと読みます。)からは、別の分類になります。スズメはスズメ科。シジュウカラはシジュウカラ科。
TVや本で「カラ類」が観察できる。と紹介があったりしますが、その内容は○○カラと△△カラ、□□カラの複数種が混在しているという意味です。
カラ類の種類
カラ類は6種類の鳥を指します。
ね。
みんな「カラ」ってつくでしょ。
「カラ類」とは、この6種類です。
細かく言うと、⑥ゴジュウカラだけは分類が少し違います。
まー「カラ類」とはシジュカラ、コガラ、ヤマガラなどを含めた総称と知ってもらえればOKです。
書籍はこちら:ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑
巣箱作りの時期選び
シジュウカラやヤマガラは、3月末から4月に巣作りの準備を始めます。
子育て時期の春よりも前から物件を確認!
そう。カラ類も人と同じで、春よりも少し早い時期から巣を探し始めます。そして、シジュカラは適当な巣穴を見つけると、巣材集め、産卵、子育て、と進むのです。
まだ肌寒い時期から準備をする事で、ヒナがエサをたくさん求める成長期と春のエサが豊富な時期が重なるのです。(写真はカオジロガビチョウの巣)
そのため、シジュウカラをターゲットにした巣箱の設置は、春の繁殖期が始まる前が大切です。また、シジュウカラは寒い冬には、巣箱をねぐらとして利用します。冬に利用した巣箱を春の繁殖でも利用する確立が高くなります。
巣箱での野鳥観察を計画するなら、秋前から巣箱を作り、冬前には設置したいところです。
春の繁殖時期を逃しても、夏に2回目の繁殖期がある
じつは、この記事のアクセスが多くなるのは3~4月。(写真はキジバトの巣)
みなさん、春が近づき暖かくなり始めると、巣作りを思い立つみたい。でもこの3~4月って…そう、野鳥が巣作りを始める時期と被っています。つまり、野鳥が物件を物色中に建物を作り始める状態なんです。
これを聞いてしまうと、3月4月に巣箱作りを思いついても、手遅れな気がすると思いまうす。でもね、大丈夫です。
巣箱作りを3月4月の春に思い立っても、まだチャンスがあります。
なぜなら、シジュウカラの繁殖は、1年で1回ではありません。夏に2回目の繁殖期があります。この2回目の繁殖期の時期は、だいたい7月頃。そのため、春に巣箱作りを思い立った方は、2回目の繁殖期の時期を目指して、巣箱を作成すれば間に合います。
春の繁殖期に間に合わせたい方は、完成品を選ぶのもありです。工具も必要なく、届いたら設置をするだけなので、簡単です。値段もお手ごろ。
巣箱の入手
巣箱はホームセンターやネットで完成品も販売されています。
急いで巣箱が欲しい方。作るのが面倒だったり、費用を抑えたい方は完成品の購入もありです。
また、巣箱の組立てキットも販売されています。
組立てキットは事前に板がカットされており、面倒な入口の穴も開いています。プラモデルを組む感覚で巣箱が作れるので、小さなお子さんと楽しむなら、組立てキットがおススメです。組み立てキットなら、釘も入っていて、トンカチだけで組み立てられます。(巣箱を吊り下げ用の紐は必要です。)作成用の説明書も同封されていて、初めての巣箱作りでも安心です。
自作は少ない個数を作ると、材料や工具の購入があるので割高。
野鳥観察の第一歩として、完成品で様子を見るのもいいと思います。それから自分で巣箱を作ってみてはいかがでしょうか?
巣箱を手作り
「完成品では物足らん!」そんな方は巣箱の自作に挑戦してみてはいかがでしょうか?
実は巣箱作りに難しいことはありません。一旦、工具が揃ってしまえば、作成に時間もかからず簡単です。巣箱を2個以上作りたい人や、毎年巣箱を作りたい人は自作がおススメです。
毎年、試行錯誤をしながら巣箱をアレンジできるのも、自作ならではの楽しみです。
材料:材木
自分で巣箱を作ると決めたら、まず材木を選びます。材木の種類はこだわる必要はありません。巣箱の場合、野外に長期間設置するので、安い材で十分です。
私は今後の入手しやすさ、価格を考慮しました。そこで選んだ材は【杉野地板 5枚束】です。ホームセンターで税込み1,080円でした。
サイズは
幅180mm。
長さ1820mm。
厚み12mm。
野地板とは
野地板は屋根の下地材として使用される板です。安価ですが、表面がザラザラと荒れているのが特徴になります。
写真のようにササクレが多いので、手に刺さらないように注意が必要な材です。
野地板は、ホームセンターで束販売されていますが、未乾燥材です。ホームセンターで販売される状態で既に、束の表面の板(上面と下面)は水分が飛んでいますが、間に挟まれている材には水分が多く残っています。間の材を作業するには事前に乾燥した方がいいです。また、表面のササクレを削る場合も、日陰で2~3日乾燥させてから作業して下さい。サンドペーパーホルダーを使って、紙やすり#60~90を使うと効率が良く、作業が捗ります。
日光で急速乾燥すると薄い野地板は反るので、日陰でゆっくり
巣箱のレイアウト
まずは、巣箱全体像を考えます。
観察用なので、見栄えを気にしないシンプルな形にしました。
分解図面はこんな感じ。
一旦、書き出すとカットする板のイメージしやすくなります。
購入した【野地板180*1820*12】1枚から、1個の巣箱
板の準備
パーツのイメージができたら、板に書き出します。
図面のサイズで線を引くだけですが・・・
線が引けない!
杉野地板の水分が多すぎて、鉛筆で線が引けません。
乾燥しておらず、材が軟らかいので、材が凹んで色がのりませんでした。
「乾燥しろよ!」との声が聞えてきそうですが、作業続行。
会社員には決まった休みしかないので、作業の延期はできません!
そこで無理やり、マッキーで引きました。水分の多い材では、油性マッキーですら、線が薄い始末。
なんとか、線が引けました。板の準備はこれでOKです。あとは線通りにカットします。
巣箱作りの道具
一旦、私が使用した道具の紹介。
仕事で使う工具が多いので、巣箱作りでも活用しました。
一般家庭にはない道具が多いと思いますが、この道具が必ず必要なわけではありません。
ただ、効率化のため、多くの道具を用いました。
板のカット
板のカットには卓上ソーを用いました。一般家庭にはない、道具です。
卓上ソーは机の内側から、ノコギリの刃が出てきます。
この刃が高速回転する事で、板を簡単にカットする道具です。
板を手で回転する刃に押し当ててカットします。
直線的にしか板をカット出来ませんが、巣箱作りでは直線だけなので、効率が良いです。
板のカットにはノコギリでも問題ありません。
杉野地板は軟らかい材なので、ノコギリでも簡単にカット出来ます。
卓上ソーを使って板をひたすらカット。
作業がしやすいように、長い板を短くなるようにカットします。
短くなった板を幅150mmになるようにカットします。元々のサイズが180mmなので30mmカットをカットします。
幅の狭いカットは卓上ソーだと難しくなります。狭い側を手で押さえると回転する刃に巻き込まれる可能性があります。こういったカットでは、狭い側を端材の板で押さえながらカットすると安全に作業できます。
卓上ソーでのカット断面はこんな感じ。高速で回転する刃でカットするので、断面はキレイです。
作業スペースがある方には、テーブルソーがおすすめです。作業の効率が卓上ソーとは比べ物になりません。
パーツがカットできたら、底板に水抜き用の穴を開けます。
この小さな板になった状態のほうが、作業がしやすいです。
使うのは、インパクトドライバーとドリル刃。
刃のサイズは6mmを選びました。
穴あけ時には、下には捨て材を置いて穴あけをします。直に地面だと、穴が後に地面に刃が接触して、刃先を痛めてしまいます。
材が鉄ではなく、軟らかい木なので簡単に開きます。
インパクトドライバーは木材加工には必需品の道具。
この巣箱作りで一番面倒だと思うのが、正面の入口用の穴あけです。
この穴径を広くしすぎると、シジュウカラ以外の野鳥が巣箱を利用したりするので、重要なヵ所です。
私は、シジュウカラが入口を口で広げる事を考慮して、直径28mmに決めました。
入口の穴あけにはホルソーを使います。
これも一般家庭にはない道具です。この道具は回転する刃として使え、木材に穴を開ける事が出来ます。ドリル刃と違い、穴径が広い場合に使う道具です。
たまたま持っていたホルソーが28mm前後なので、一発で穴あけが終わる計算です。
ホルソーをしっかりとドリルのチャックにくわえます。
あとは、穴を開ける場所に押し当てて、開けます。
ドリルの刃同様に、下には捨て材や空間を開けて使用すると刃先を痛めません。
ホルソーを使えば、こんな感じで巣箱の入口の穴が開けられます。
寸法を確認。
28mmで開いています。
ホルソーで開けるとバリが出るので、木工用鑢でキレイにします。
鉄用鑢と木工用鑢の違いは、目の粗さです。木材は削りカスが鑢の目に詰まりやすいので、鑢の目が粗くなっています。
全てのパーツが完成したら、組立てです。
使うのは木工の定番、ボンド。
パーツを組み立てます。
少しボンドがはみ出るぐらいがベスト!
正面から見るとこんな感じ。
ん~それっぽいです。
屋根を取り付けるのに忘れてはいけない、蝶番。
巣箱は野鳥が使用すると、中が巣材などで汚れます。何度も再利用するには掃除が不可欠で、フタを開閉式にする事で掃除をやりやすくします。
蝶番はこんな感じでつけます。
取り付け面を間違えると、開かない屋根が出来上がるので、つける前に確認して下さい。
屋根に蝶番を付けたら、開閉の確認。
こんな感じで屋根が開くと掃除が出来ますね。
組み当て終わると、底板の寸法間違えが判明。
巣箱の設置方法を考えると、余り分が干渉してしまい問題あり。
ノコギリで余り分をカットしました。側面以外なら、カットしなくても問題ありません。
巣箱の塗装
巣箱が完成したら、塗装をします。
使ったのはダイソーで売っていた、水性ニス。
実は巣箱には、塗装やニスは必要ありません。
が、私は外の面だけ塗ることにしました。
野外の環境下で、木材の耐久性を上げるためです。
せっかく作ったので、何年も再利用出来たらいいなーという考えです。
全面にニスを塗って終了。
塗りたてのニスは色が少し紫がかっています。
水溶性ニスなので、日陰でのんびり乾かし、巣箱作りは終了。
まとめ
ニスが乾くと、茶色になりました。
背面板に穴を開けて、針金等で縛れば設置も簡単。
道具や手順が分かっていれば、1時間ほどで作れます。
皆さんも作ってみて下さい。