野生動物の撮影

自作した自動撮影装置で野生動物撮影

野生動物の自動撮影を考えている、あなたへ

自動撮影装置

「自動撮影装置とは?トレイルカメラとは違うの?機材は何が必要?」

こんな疑問に答えます。

自動撮影装置でクォリティの高い野生動物写真

masou masouの写真

この記事を書いている私は、野生動物撮影を10年以上自動撮影装置を自作しており、自動撮影装置で撮影した野生動物写真では、写真コンテストで入賞もしています。

フィールドや撮影対象に合わせた、自動撮影の設置技術を持っています。この経験から、記事を書いています。

タヌキの写真

自動撮影装置の魅力はなんといっても、クォリティの高い野生動物写真です。

迷彩ネット使用姿

通常、野生動物撮影では、超望遠レンズやカモフラージュテントを利用して撮影します。

つまり、野生動物から姿が見えないように撮影するのが、野生動物撮影の特徴です。

あなたも野生動物撮影の経験があるなら、わかると思いますが、野生動物はヒトが嫌いです。そのため、ヒトの姿や気配を感じると直ぐに逃げてしまいます。この逃げの動作や警戒をしている野生動物を撮影しても、クォリティの高い写真にはなりません。

なぜなら…ナチュラルな表情ではないから。

ヒヨドリ

野生動物もヒトと同じで、感情が表情に現れます。警戒や緊張は特に表情に現れます。この表情をヒトを意識していない、ナチュラルに撮影できれば、野生動物写真はクォリティが高くなるのです。

自動撮影装置でジョウビタキ撮影

どんな野生動物も自然を生き残る戦略を持ち合わせており、私はそこに惹かれています。そんな野生動物の魅力最大限に表現できる撮影手法が自動撮影装置です

①自動撮影装置について

①-1 自動撮影装置の仕組み

自動撮影装置の設置風景

自動撮影装置は、センサーでカメラのシャッターを切るが特徴です。

指で押して撮影する撮影とは異なり、センサーで撮影するのが、自動撮影装置です。センサーを野生動物に反応するようにセットすることで、野生動物自身がシャッターを切ってくれます。センサーには様々なモノがあり、状況に合わせて選定します。

①-2 自動撮影装置の特徴

自動撮影装置用カメラ

ヒトがいなくても、撮影できる。

自動撮影装置の最大のメリットです。野生動物はヒトの姿があると近づきません。そのため、ヒトが指でカメラを操作する撮影手法には限界があります。

「もう少し近づきたい…」こんな経験があなたにもありますね。この問題を自動撮影装置では、センサーを使うことで解決します。また、機材を長期間、野外に放置することで、野生動物の自然な表情が撮影可能です。

シジュウカラの巣

野生動物は、人工物に警戒すると考えている方が多いですが、そこまで野生動物はやわではありません。

日本国内、どこにでも人工物が溢れている現代では、野生動物は人工物を見慣れています。自動撮影装置の設置当初は、警戒しますが、1週間もすれば、自動撮影装置を当たり前の景色として、とらえてくれます。

①-3 トレイルカメラとの違い

自動撮影装置

自動撮影装置はカメラが高性能。

トレイルカメラ

自動撮影装置はトレイルカメラと基本的な動作は変わりません。トレイルカメラは、入手がしやくす、価格も安く、コンパクトで設置が簡単です。

トレイルカメラで撮影した写真

最低限の画質は確保されているので、野生動物の調査・研究にはトレイルカメラで問題ありません。

トレイルカメラで撮影した写真

しかし、作品としてはクォリティは低く、満足のいく写真にはなりません。これはトレイルカメラが、野外で万能に対応するためのカメラ性能とセンサー性能の機械のためです。

自動撮影装置では、一眼レフカメラを使います。一眼レフカメラは写真のクォリティが高く、レンズも交換が可能です。

私も最初は一眼レフカメラを野外に放置するのに抵抗がありましたが、撮影されたクォリティの高い写真を見て感動したのを覚えています。トレイルカメラと比べると次元が違います。

自動撮影装置用ストロボ

また、自動撮影装置はセンサーやフラッシュも状況に合わせて、専用に組み替えます。

あなたが野生動物を撮影するときの操作が、自動撮影装置なら可能なので、クォリティの高い写真が撮れるのです。

②自動撮影装置の設置

②-1 撮影イメージを考える

ノウサギの写真

自動撮影装置は、設置したら移動はしません。移動させると違和感を与えてしまい、野生動物が自動撮影装置を避けてしまいます。自動撮影装置が、当たり前の景色になれれば、野生動物写真がバシバシ撮影されます。

そのため、自動撮影装置では、設置前の撮影イメージが大切になります。有名な5W1Hで考えるとイメージが明確にできます。

5W1Hとは「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのようにして」です。

  • いつ:季節・時間帯
  • どこで:山・林・庭
  • だれが:ネズミ・ウサギ
  • なにを:食事シーン・歩くシーン
  • なぜ:見たことのないシーンだから
  • どのようにして:マクロレンズで細部まで描写

このようにイメージを構築します。

この記事用に撮影した写真では、このようにイメージを構築しました。

  • いつ:冬・日中
  • どこで:庭
  • だれが:自動撮影装置
  • なにを:ジョウビタキ
  • なぜ:自動撮影写真のクォリティの高さを表現
  • どのようにして:マクロレンズで細部まで描写 ポートレート風

このイメージから撮影した写真がこれです。

自動撮影したジョウビタキ

②-2 イメージが具体化できるかを考える

テンの写真

大変良いイメージであっても、イメージが現実と離れていては、永遠に撮影できません。

野生動物の撮影において、1番大切なのが、調査・観察です。この調査・観察により得られた情報を基に、撮影イメージを膨らませます。この経験が豊富であれば、無理な撮影イメージはそもそも、湧きません。なぜなら、野生動物の行動が見えなくても、わかるからです。野生動物の撮影した行動を決めたら、場所の選定です。

動かせない自動撮影では、設置場所が大変重要なので、イメージは良くても、設置が困難だと諦めるケースも出てきます。自然相手なので、自然に合わせる必要があります。

②-3 自動撮影装置の機材

自動撮影装置

自動撮影装置で必要となる機材の説明です。撮影対象や状況で変化しますが、基本となるベースのシステムは同じです。

自動撮影装置の機材
  1. カメラ
  2. レンズ
  3. 防水カメラケース
  4. センサー
  5. フラッシュ
  6. 三脚

上記の機材が自動撮影装置では必要です。詳細について説明します。

①カメラ:一眼レフカメラ

自動撮影装置用カメラボディ

カメラは一眼レフカメラが必須です。

コンデジでも自動撮影は可能ですが、バッテリーの容量やフラッシュ等の拡張性が低いのでおススメはできません。コンデジを自動撮影装置用に改造する手間を考えると、中古で一眼レフカメラを購入した方が、のちのち得になります。

②レンズ:単焦点レンズ

自動撮影用レンズ

レンズはカメラボディに合っていれば、ズームレンズでも可能です。

野外では少しでも機材を少なくしたいので、ズームレンズで対応するのも手です。しかし、画質の面では、単焦点レンズが最高です。単焦点レンズは軽く、明るいレンズが多いので野外での取り回しが良いと感じます。事前に撮影イメージができていれば、必要となる焦点距離もおのずと見えてきます。

③防水ケーズ:プラスチックケーズ【自作加工】

自動撮影用カメラケース

安いプラスチックケースで自作。

自動撮影装置は野外に長期間設置するので、雨や砂埃からカメラとレンズを守る必要があります。費用や加工の手間を考えると、ホームセンターで手に入るプラスチックケースが、おススメです。サイズがまちまちなので、カメラボディとレンズサイズに合わせて、ケースサイズを選定します。

防水ケースには、撮影用の透明窓、三脚取付用の穴、ケーブル用の穴の加工をします。

④センサー:DC12V仕様

自動撮影用センサー

大切なセンサーは、撮影状況で選定をします。

センサーにも様々な種類があるので、撮影イメージに合わせて選定するのが必須です。基本的には赤外線センサーを使います。目には見えない赤外線を使うセンサーなので、野生動物がセンサーに気づかずに撮影ができます。

赤外線センサーには大きくわけると「対向式」と「反射式」があります。「対向式」は2個のセンサーを使うため、センサーの検知範囲が大変狭く、ピントが重要な撮影で使います。「反射式」はセンサーの検知範囲が広くいですが、センサーは1つなので、設置が簡単です。この2種類を準備しておき、撮影イメージに合わせて使い分けます。

カーバッテリー

どちらのセンサーを使うにしても、大切なのが電源です。野外では電源の確保が難しいため、必ずDC12V仕様を選びます。DC12Vなら車のバッテリーが流用できるためです。カーバッテリーは充電が可能、比較的安価、十分な容量が魅力です。

④フラッシュ:専用に自作

自動撮影用フラッシュ

フラッシュは自作品。

多くの野生動物は夜に活動します。高感度に優れたカメラが登場している現代ですが、全く光のない状態での撮影は無理です。カメラボディに内蔵されたフラッシュは、光量や位置の面から自動撮影装置では、役に立ちません。必ず、外付けのフラッシュが必要になります。

昆虫撮影時のフラッシュ

ここで問題となるのが、選ぶフラッシュの種類です。自動撮影装置で扱うフラッシュは、長期間待機できる能力が必須です。設置して直ぐにバッテリーが切れてしまっては撮影になりません。また、最近のフラッシュの多くは、省エネモードを搭載しており、30分間操作をしないと、自動で電源が落ちるシステムが搭載されています。このシステムが厄介で、電源が落ちたら、再度、フラッシュの電源を入れる必要があるのです。つまり、このシステムを搭載したフラッシュも自動撮影では使えないという意味です。だって、傍にいないから、電源は入れられません。

そこでは私は、自動撮影装置用に使えるフラッシュを自作しています。

⑤三脚:野外に放置できる丈夫なモノ

自作三脚

中古や自作。

野外に放置するので、安い中古や自作します。

設置場所によっては、三脚の形をしていなくても大丈夫です。カメラやセンサー、フラッシュが固定できれば良いので、木で作れば安くあがります。ただ、野外で自動撮影装置を組み立てるのは、意外と手間です。普通に3時間ぐらいかかります。三脚の方が、設置時間が大幅に短縮できるので、安い三脚を探してみて下さい。

私は低床撮影用に、金属で自作しています。

②-4 自動撮影装置の設定

自動撮影装置

撮影イメージが決まっていれば、イメージに合わせてカメラの選定をします。自動撮影では、撮影中に細かな設定変更はできません。ヒトが傍にいないので当たり前ですね。

私の自動撮影装置の設定はこんな感じです。

  • カメラ設定:マニュアル
  • レンズ:イメージに合わせて
  • センサー:イメージに合わせて
  • フラッシュ:イメージに合わせて

どうですか?全く役に立たない情報ですね。

それもそのはず。撮影イメージによって機材や設定を変えることで、クォリティの高い写真になるので、現場ごとに最適な設定を試行錯誤するしかありません。ただ、ある程度は自動撮影を経験すれば、身につく知識なので、まずは失敗を恐れずにチャレンジです。

③自動撮影に挑戦すなら読んでおきたい本

自動撮影装置についておわかりいただけたでしょうか。

最後に自動撮影装置の勉強になる本を紹介します。素晴らしい本なので、自動撮影装置の勉強におススメです。

③-1 けもの道(森の写真動物記1) 宮崎学

③-2 となりのツキノワグマ 宮崎学

③-3 極楽鳥 全種 世界でいちばん美しい鳥 ティム・レイマン