チェーンを交換したい。チェーンの交換方法がわからない。チェーン交換に必要な工具は?効率よくチェーン交換する工具はない?」
こんな疑問に答えます。
この記事を書いている私は、仕事で機械設備の交換・修理をしています。
エアシリンダーやモーター、ファンなどの機械を様々な機械を扱っており、仕事を効率化するために、多くの工具を所有しています。
この記事では、機械設備で使われているチェーンの交換方法や工具についてお話します。
㈱ハヤタリミテッド:チェーンカッター【プロ必須】
目次
チェーンとは
チェーンは産業用部品の一種です。
チェーンはスプロケットと呼ばれる歯車を介して、モーターやエンジンといった、動機による回転運動を被動機に伝えます。
動機による回転運動の伝達方法には、ベルトやギア・シャフトなど様々ありますが、メンテナンス性やスムーズな動力伝達力などから、チェーンが採用されている機械が大変多くあります。
チェーンは駆動を伝える用途から【ドライブチェーン】とも呼ばれます。
その【ドライブチェーン】の中で一般的に【チェーン】と呼ばれているのが、【ローラーチェーン】です。
ローラーチェーンの構造
ピン
ピンは内プレート・外プレートと共にせん断や曲げを受ける部分です。
ピンはチェーンがスプロケットとかみ合う際に、ブッシュと共に軸受部となります。そこでピンには、曲げ強さ・せん断強さ・摩耗耐性が必要となります。
ブッシュ
ブッシュはスプロケットとかみ合う際に、ローラーを介して強い衝撃を繰り返し受ける部分です。
ピンとの軸受けの役割もするため、ブッシュは衝撃への強さ・耐摩耗性が必要になります。
ローラー
ローラーは伝動中に、チェーンがスプロケットとかみ合った際の衝撃を和らげます。
ローラーはスプロケットとブッシュに挟まれた状態でスプロケットの歯面を移動するので、衝撃強さ・耐圧縮強さ・耐摩耗性が必要な部分です。
内・外プレート
プレートはチェーンにかかる張力を支えます。
プレートには繰り返し荷重だけでなく、衝撃が加わる場合があります。そのため、プレートには抗張力・疲れ強さ・衝撃強さが必要な部分です。
内リンク
内リンクは2枚の内プレートに2個のブッシュが圧入されています。
圧入されたブッシュの外側には、回転できるようにローラーがはめ込まれています。
外リンク
外リンクは2枚の外プレートに2本のピンが圧入されています。
チェーンサイズ
チェーンのサイズ表記は製造メーカーを問いません。チェーンの表記はインチ表示で統一されています。
私が仕事で扱う機会の多いチェーンサイズは35~60です。
ローラーチェーンの交換・調整
チェーンは使用して伸びた場合でも、機械側で調整が出来るように設計されています。多少のチェーンの伸びは、機械側の調整で対応できますが、破断や摩耗の場合は新品のチェーンに交換する必要があります。
初めてのチェーン交換は方法がわからず不安に感じてしまいますが、慣れれば大丈夫。
サイズや種類によって多少は変化しますが、基本的な交換・調整方法は同じです。
チェーンをカットする
チェーンは1箱に入っているリンク数だと、使用予定の箇所には長すぎる場合がほとんどです。そのため、チェーン交換を覚えるには、まずチェーンを短くする方法を知る必要があります。
チェーンは内リンク同士
チェーンは両端を必ず内リンク同士にします。内リンク同士でないと、接手でチェーンを繋げないためです。
内リンク同士を簡単に言うと、写真のように穴と穴同士にすることです。
チェーンカット部に印
チェーンの必要となる長さが決まれば、あとはカットです。チェーンのカットする位置が決まったら、カット位置に印をするようにします。
チェーンの色にもよりますが、白色の油性のペンが印が目立つのでおススメです。
チェーンには錆防止のために油が付いているおり、安い油性ペン(マッキー)だと印が付きにくいです。また安いペンだとペン先が痛み、直ぐに使えなくなります。
仕事では、不易糊工業㈱の【工業用消えないマーカー】シリーズを使っています。【工業用消えないマーカー】特に中サイズを愛用。ペン先が強く下地が悪い状態でも安心して使えます。
発色が良く、木材・ガラス・プラスチック・鉄など様々の材質に使用できるのも選んでいるポイントです。仕事では、カバンに1本必ず入れています。
チェーンをどの位置でカットするかにもよりますが、半分の位置でカットする場合は使う方と使わない方チェーンを間違える事がしばしばあります。
そこで私は、使用しない側のチェーンには印をして見分けるように習慣づけています。余ったチェーンは印がしてあっても性能には問題ありません。
自転車やバイク用のチェーンに印は応用できないかもしれませんが…
外プレートのピンを削る
チェーンをカットする手法の続き。
印をした圧入してあるピンの頭を削ります。ピンを削る道具は【ディスクグラインダー】です。
仕事柄、ディスクグラインダーを複数所有していますが、最近はバッテリー式のタイプを愛用しています。AC100Vタイプとは異なり、コードレスなので取り回しが良いのが特徴です。
私は14.4Vのモノを愛用していますが、最近は18Vが流行っています。14.4Vと18Vの価格差も少ないので、これから買う方は18Vが良いかもしれません。
ただ、14.4Vでも問題はありません。私は仕事で14.4Vを使っていますが、そこまで不便さは感じていません。
価格や導入予定のコードレス製品から、バッテリー電圧を選んで下さい。
ディスクグラインダー: G18DBBVL(LXPK)充電器付きセット
ディスクサンダーの砥石にも種類があります。今回のピンの研磨には研磨用の砥石を使用します。砥石には粒度というものがあります。
粒度は棒ヤスリの目の細かさと同じと考えれば大丈夫です。家庭での一般作業や、ちょっとした研磨なら、80の粒度が扱いやすいです。
日本レジボン:オフセット砥石 スキルタッチ80 20枚入り
ピンの頭は外プレートに潰して圧入されているので、圧入部分を全て削るように研磨します。
慣れていないとピンが小さく、また研磨中にチェーンが多少動くので難しい作業になります。
しかし、ピン自体はディスクサンダーで簡単に削れるので、ケガをしないように焦らずに行って下さい。
ピンを外プレートと同じ高さまで研磨するとこんな感じになります。
研磨が足らないとピンが抜きにくいので、外プレートまでしっかりと研磨します。
また、研磨はチェーンの両面をするようにして下さい。
ピンを抜く
研磨が済んだら、ピンを外します。
ピンは下に打ち抜くのですが、ピン自体に長さがあるので、事前にチェーンの下に木などの厚いモノを敷いて、高さを出します。
ピンを抜くにはピンポンチを使います。
ピンポンチには太さがあります。複数サイズセットのピンポンチの場合は、適切なポンチを選びます。
ピンポンチで、ピンだけを叩いてピンを抜きます。
この際に、ピンよりも太いピンポンチを使うと、ピンポンチが外プレートに当たってしまってピンを叩けません。
そこで、ピンポンチの太さの選定が必要となるのですが、簡単に最適なポンチの太さを選ぶ方法があります。
それがチェーンの端(内リンク)のブッシュ径を利用する方法です。
方法は簡単!
内リンクのブッシュにピンポンチを入れてみるだけです。ピンは内リンクのブッシュに刺さっている構造なので、丁度良くブッシュに入るポンチが適切な太さとなります。
ピンポンチが細いと、ブッシュ内で遊びが出るので、出来る限りピッタリのサイズを選びます。
今回の№60チェーンだと、直径が6mmのピンポンチがベストでした。
ピンポンチはハンマーで叩いて使います。
チェーンのピンを正確に叩き抜きます。ピンは片面の2本を同じ方向へ叩き抜くようにします。
2本のピンを叩き抜くと、外プレートが外れるようになります。
外プレートが外れれば、ピンは簡単に下に抜け落ちます。
外プレートとピンが外れれば、完了です。
それぞれのチェーンの両端が、ちゃんと内リンクになっています。チェーンを短くするにはこんな感じで作業するのが、一般的です。
チェーンカッターバージョン
これまでのチェーンを短くカットする手法を説明してきました。この手法が一般的ですが、実際に作業してみると、センターポンチでピンを打ち抜くのが、手間と感じると思います。
なぜなら、
- チェーンが長いと、絡まり扱いにくい。
- ピンポンチで何度もピンを打ち抜くと、疲れる。
- ハンマーで手を叩き、痛い思いをする。
特に数をこなす必要がある場合は少しでも、早く・安全に・ラクに済ませたい。
そこで導入した工具が、ハヤタリミテッドのチェーンカッターです。
型式は、CHR-560型。CHR-560型の仕様はこんな感じです。
適合チェーン:50・60 シングルチェーン
質量:0.99㎏
本体鍛造製
CHR-560使い方
先ほどの説明通りに、チェーンのピン部をディスクサンダーで研磨します。
実はCHR-560は、研磨をしない状態からでも、ピンを抜く能力を持っている工具ですが、私は工具を長く大切に使いたいので、ピン部を研磨してから使うようにしています。
CHR-560の先端は直径4mmのピンになっており、このピンでチェーンのピンを押し抜きます。
よく、自転車やバイク用のチェーンカッターの記事を見かけますが、安物のチェーンカッターは、このピンが弱かったり、しめ込む力が必要だったりするようです。
CHR-560で嬉しい誤算だったのが、チェーンのローラーを載せる台の形状です。この絶妙な台の形が、チェーンを簡単に固定する事ができます。
台にピンを抜きたい位置を合わせて載せるだけです。使えばわかりますが、この形は本当に最高に扱いやすいです。
あとは、ハンドルを操作してピンを押し込むだけ。
チェーンのピンは左右を交互に少しづつ、抜くようにします。
空回りした状況になった場合は、チェーンカッターのピン位置とチェーンのピン位置を確認します。ピンの位置がズレて外プレートを押している場合が大半です。
工具の能力を知るために、少し過酷な使い方もしてみましたが、全く問題ありません。
サイズもそこまで大きくないので、チェーン交換の頻度が高い職業の方は必ず買ったほうが良い工具です。