機械の修理・構造

モーターのベアリング交換手順

「モーターが動かない。モーターからカラカラと音がする。過負荷で停止する。」

それらの多くの原因がモーターベアリングです。

モーター故障で一番多いモーターベアリングの交換方法を説明します。

モーターの機械的故障の対応

モーターが動かない理由は【電気的故障】【機械的故障】にわかれます。

電気的故障】と【機械的故障】の判断は別記事を参考にして下さい。

この記事では【機械的故障】の修理方法(ベアリング交換)を説明します。

モーターのベアリング交換方法

①モーターの現状確認

①-1モーターのラベルを確認する

動かない200Vモーターを分解

モーターを分解する前にはモーターのラベルを確認します。

ラベルはモーターの側面や上面に貼ってあります。

動かない200Vモーターを分解

!?

…ラベルがない。

古いモーターや環境の悪い場所で使ってたモーターはラベルが紛失していることもあります。

今回分解するモーターもラベルがありませんでした。

三相モーターラベル

通常、ラベルはこんな感じです。

ラベルが残っていれば、モーターを新品に交換するのも簡単です。

上記ラベルなら【1.5kw AC200V 4P】がモーターを新品交換時に必要となる情報です。

①-2ベアリングを準備する

モーターラベル

ラベルには、使用されているベアリング情報も記載されています。

モーターには、前後で2個のベアリングが使用されています。

このラベルの場合、使用されているベアリングが6205×2個だとわかります。

事前にラベルを読み、ベアリングを準備しておくと交換作業がスムーズです。

動かない200Vモーターを分解

今回分解するモーターはラベルがなく、ベアリングが事前に準備できませんでした。

そのため、分解してベアリングサイズを確認します。

②モーターのベアリング交換

②-1 回転の確認

動かない200Vモーターを分解

モーター不具合が機械的原因と判断するには、軸を手で回転させます。

ブレーキ付きモーターやギアモーターは手では軸を回転させられません。

しかし、普通のモーターは手で軸を回すことができます。

モーターの動作確認

機械的不具合がなければ、上記のように手で軽々と回すことができます。

回転は左右どちらもスムーズでないといけません。

どちらか一方にしか回転しない場合も、ベアリングに問題があります。

動かない200Vモーターを分解

今回のモーターは手では軸が全く動きません。

この症状はベアリングが原因です。

モーターを分解して、ベアリングを交換する必要があります。

②-2 外装に印をつける

動かない200Vモーターを分解

必ず分解の前に印をつけます。

印ように様々なペンを試しましたが、最近は「消えないマーカー」を使っています。

「消えないマーカー」は、ペン自体が丈夫で、インクの出も良く、インクの持ちもいいです。

動かない200Vモーターを分解

印は見えやすい場所につけます。

このタイプのモーターは、位置は重要ではありません。

しかし、機械を分解する時は印をつけるのを習慣にして下さい。

印は複雑な構造組み立てに役立ちます。

③モーターの分解

外装分解

動かない200Vモーターを分解

このモーターには、冷却用の羽がついています。

上記写真の左側が羽を保護しているカバーです。

モーターのベアリング破損で多いのが、羽側のベアリングです。

動かない200Vモーターを分解

保護カバーを外す。

カバーがついていると分解が進まないので、カバーを外します。

大抵のカバーは3本のボルトで固定されています。

動かない200Vモーターを分解

保護カバーを外すと、樹脂製の羽が出て来ます。

この羽がモーター軸の動きと連動しています。

モーターが回転すると羽も回転して空気を流し、モーターを冷却します。

羽は軸と同じ速度の高速回転をします。

保護カバーを取り外す際には、凹ませないように注意して下さい。

カバーが凹んでしまうと羽と干渉して、羽が破損してしまいます。

動かない200Vモーターを分解

羽は軸と繋がっているので、羽を手で回転させると軸が連動して動きます。

この方法は、軸を手で回すよりも軽い力で確認が出来ます。

ただ、ベアリングが破損しているモーターは、この方法でも軸は全く動きません。

動かない200Vモーターを分解

羽側も外装に印をつけます。

この印は軸側の印と少し変えます。

私は軸側を1本線、羽側を2本線にしています。

これは、軸側と羽側のどちらも同じ形の外装だからです。

形が同じなので、間違えても組み立てられます。

しかし、本体の外装の向きが変わるので、端子台の位置が変わってしまいます。

すると、配線の取り回しが変わってモーターが取り付けられなくなる場合があります。

動かない200Vモーターを分解

外装に印をつけたら樹脂製の羽を外します。

このモーターの羽を良く見ると樹脂が溶けています。

これにより、ファン側のベアリングが油切れで破損している事が考えられます。

動かない200Vモーターを分解

ベアリングのグリスが溶け出し、油切れになると抵抗が生じるので、ベアリングから熱が発生します。

この羽もその熱により、溶けたのだと考えられます。

動かない200Vモーターを分解

羽はスナップリングという部品で、軸と固定されています。

スナップリングを外すには専用の工具を使用します。「スナップリング抜き」です。

動かない200Vモーターを分解

「スナップリング抜き」は先端が尖っており、スナップリングの穴に入れて外します。

スナップリング抜きには、先端のサイズや形、取り外す際の動き(開き・閉じ)で種類があります。

スナップリングの大きさや位置によって使いわけます。

動かない200Vモーターを分解

スナップリングの穴に「スナップリング抜き」の先端を差込みます。

今回のスナップリングは、開くと外せるタイプです。

スナップリング抜きは、開きタイプを使用します。

モーター羽を取り外すには、開きタイプのスナップリング抜きがあれば大丈夫です。

動かない200Vモーターを分解

スナップリングはこんな形をしている部品です。スナップリングは柔らかい材質です。力を入れて外すと歪んでしまい、再利用が出来なくなります。

動かない200Vモーターを分解

スナップリングが外せれば、羽は引き抜けます。

動かない200Vモーターを分解

羽は周囲の空気を利用してモーターを冷却するので、汚れが溜まります。

動かない200Vモーターを分解

機械の油汚れを落としたい場合はパーツクリーナーを使います。ホームセンターで200円ぐらいで売っています。

動かない200Vモーターを分解

パーツクリーナーは、値段が高い物ほど汚れが落ちやすいです。

動かない200Vモーターを分解

羽を外したら、外装を外します。外装は通しのボルトで固定されています。一方を固定しながらナットを緩めると外せます。ボルトは4本使用されているモーターがほとんどです。

動かない200Vモーターを分解

ボルトを全て外せたら、外装の隙間にマイナスドライバーを入れて隙間を大きくします。

動かない200Vモーターを分解

ボルトが全て外れていれば、この部分は簡単に外せます。

動かない200Vモーターを分解

外装から回転子も抜けました。この回転子が回ることでモーターは動作しています。

動かない200Vモーターを分解

回転子の回転を支えているのが、外装に打ち込まれているベアリングです。

回転子を支えるように軸側とファン側に使用されています。

それぞれ1個ずつ使用されており、モーターによって前後で使用されているベアリングのサイズが違います。

動かない200Vモーターを分解

ケースについたままではベアリングの交換ができないので、ケースからベアリングを外します。

ベアリングはしっかりとはまっているので、油を使用して下さい。

動かない200Vモーターを分解

サイズは小さいので外装を叩いて外します。

叩くと外装が潰れたり割れたりと、破損の原因になるので気をつけながら叩きます。

コツは、同じ箇所を叩かずにケースを回転して叩く箇所を均等にします。

動かない200Vモーターを分解

均等に叩くとベアリングが外装から外せます。

動かない200Vモーターを分解

ベアリングを手で回します。よく回転していますね。油は切れておらず、問題ありません。

やはり、問題はファン側のベアリングです。

動かない200Vモーターを分解

回転子についたまま抜けたファン側のベアリングは、手で回りませんでした。不具合の原因のベアリングを外します。

今回は3本爪のプーリー抜きでベアリングを外します。

動かない200Vモーターを分解

プーリー抜きでボルト部分を工具で回してベアリングを外します。

プーリー抜きの多くが、爪の数は2本です。

3本爪のプーリー抜きは、2本爪タイプよりも力が伝わりベアリングが抜きやすいです。

動かない200Vモーターを分解

外したベアリングです。羽側のベアリングが内部で破損していました。

このモーターは使用されている2個のベアリングのサイズは同じでした。

動かない200Vモーターを分解

外したベアリングのサイズを確認します。

ベアリングサイズは、6206Zです。

動かない200Vモーターを分解

破損していたベアリングもサイズ確認をします。同じ6206Zです。

あとは、ベアリングを新品に交換して、分解した手順通りに組みなおせば完成です。

完成したモーターは必ず、手で軸が回転するのを確認して下さい。

まとめ

動かない200Vモーターを分解

モーターのベアリング交換は手順がわかれば難しくありません。

必要工具

スナップリングプライヤー

ベアリング抜き

プーリー抜き