その他機材

低床三脚を自作

「野生動物撮影」で必ず狙う構図の1つが、動物目線のアングルです。ヒトの高い目線からのアングルではなく、被写体となる「野生動物」の低い目線位置までカメラを下げ、撮影します。すると、目線が合い、「野生動物」と一対一の緊張した状況が写真に込められます。

ヒキガエルの写真

しかし、フィールドで出会った「野生動物」の目線までカメラを下げるのは簡単ではありません。

フィールドといっても、自然環境は様々です。草地や岩場、水場、砂場など。目線を合わせるのに、泥に這い蹲ったり、水に浸かったりする必要のある場面は珍しくありません。

身体・服の汚れは、洗えば落ちます。撮りたい写真が撮れるなら、汚れなんて問題ありません。

「野生動物」の中には、ヒトの足元ぐらいの視線の生き物も多く、目線を下げるために、うつ伏せで撮影する事も多いです。うつ伏せでは、身体が地面に接していますが、腕を曲げてカメラだけ高さを出した撮影もします。

そんな状況で気になるのが「手振れ」です。

うつ伏せ状態で、カメラの高さを出すと、腕だけでカメラを押さえることになり、カメラのホールドが甘くなります。

野外の暗い状況も合わさって、手振れが発生してしまうのです。

色々な対応方法を活用して撮影してきましたが、ついに自作の三脚を作ってみました。

案外使えないゴリラポッド

ゴリラポッド

軽くて、足の自由がきく「ゴリラポッド」

持っている方も多いのではないでしょうか?

ゴリラポッド

私もカメラリュックに入れて野外に持ち歩いていました。

でも、実際に使ったのは数回だけ。

ゴリラポッド

ゴリラポッドの足はフレキシブルなので、自由な固定が出来るのが魅力です。

でも、この魅力の足が使えなかった。

自由な動きが可能ですが、現場でいちいち足をセットするのが面倒だったのです。

ゴリラポッド

平らな場所なら、だいたいの形を決めれば止まります。

でも、野外の複雑な環境では、三脚自体の重さがないので固定が出来ないのです。

ゴリラポッド

特に重心が高い位置になる、ストロボでの使用は出来ませんでした。

光を複雑に調整したいストロボですが、生き物相手の撮影ではスピードが必要になります。

少し目を離した隙に見失うなんて、ザラです。

そのため、ゴリラポッドの足をいちいち調整してられません。

調整しても、手を離すと倒れるし…

中型三脚

そこで、大半はストロボのライティングに中型の三脚を使っていました。

パッと位置を決めて、足を開くだけの簡単設置。

が、少し重い。

重さがあると倒れなくて良いのですが、足の長さもあるので、設置する場所を選びます。

また、リュックには入らないので、野外活動中は手に持ち続ける必要もあり、荷物になります。

もっと「気軽で使える三脚はないか?」と悩んでいたのですが、見つかりませんでした。

そうなれば、自分で作るしかありません!

ない物は自作すればいいのです。

自作三脚に必要な点

超低床

ゴリラポッド

低い位置で撮影するにはカメラの位置を下げるしかありません。

この位置ぐらいなら、うつ伏せで肘を立てると丁度い高さになるので、問題はありません。

でも、この位置ってまだ高いんです。

カエルやヘビは地面スレスレの位置にいます。

それらの目線位置からの撮影にも使えるようにゴリラポッドよりも低い三脚にします。

コンパクト

中型三脚

低床でも大きくては意味がありません。

コンパクトでリュックにはいるサイズが理想です。

また、低床が可能な三脚の多くが、撮影時に足が邪魔になります。

足が長いので、草や木に当ってしまい被写体を逃がした事も多くあります。

自作三脚には、その点も考慮します。

圧程度の重さ

三脚転倒

三脚は軽くては意味ありません。

ストロボなどの重心位置が高い機材で使用しても倒れてはいけません。

倒れる三脚なら使う必要ありませんから。

でも、重すぎると持ち運びが億劫になってしまいます。

我がままですが、仕方ありません。

せっかく作っても「使わない」では意味がありませんよね。

使用する用途を考え、ストロボ・カメラを支えられる重さで製作します。

超低床三脚

超低床三脚

自作三脚には足をなくしました。

足のない三脚を三脚と呼べるのかは疑問ですが、私の使い方では問題ないと判断しました。

超低床三脚

三脚の全体像はこんな感じ。

え?

ただの板だって?

そうです。

ただの鉄板が超低床三脚の正体です。

これでも超低床三脚を作るにあたって、今までの経験から色々と考えました。

超低床三脚

持ち運びやすさ、手入れの良さ、金額、最低限の機能性。

それらから、たどり着いたのがこの形です。

超低床三脚

まずは重さの設定です。

カメラよりも軽いと足がないので、転倒してしまいます。

そこで、D7000とバッテリーグリップの重さを参考にしました。

通常はこの状態で低床撮影はしません。

バッテリーグリップの分、高さが出てしまうからです。

しかし、シグマ17-70mmマクロは使用します。

シグマ17-70mmマクロはズームレンズなので、ズーム時にバランスが崩れやすくなります。

それらを踏まえて、重さは1㎏前後が必要です。

超低床三脚

厚みやサイズを扱いやすいようにカットして重さを調整しました。

雲台を合わせて1,382gの三脚です。

持った感じは少し重いですが、持ち運ぶのには問題ありません。

超低床三脚

追加で少し小型なバージョンも作りました。

1㎏をきり、軽くしてあります。

基本的にはこの小型タイプで問題ないはず。

三脚雲台

三脚で忘れてはいけないのが、雲台です。

雲台は小型で自由度の高い物を選びました。

小さい雲台だと固定力が弱いですが、私の使い方では問題ないと判断。

超低床三脚

雲台と三脚を固定するにはネジが必要です。

1/4インチネジ

市販品の三脚で使用されている1/4インチネジを使います。

このネジはホームセンターで普通に売っています。

カメラ機材の自作には欠かせない部品の一つです。

超低床三脚

ネジと鉄板の固定に溶接を選びました。

三脚の下面を平らにする必要があるので、鉄板に穴を開け、ネジの六角をその穴に合わせて削りました。

穴にボルトを埋め込み、外から溶接をします。

溶接で盛り上がりが出来るので、サンダーで削り、下面を平らにしてあります。

ネジと鉄板の固定が溶接なので大変丈夫です。

超低床三脚

ネジの長さが雲台のナットの深さに調整してあります。

ネジの長さが長いと、雲台と三脚が浮いてしまい、ネジに力がかかります。

ネジは硬い物ではないので、変に力がかかると折れる心配があります。

三脚と雲台がピッタリとついていれば、面で力を支えられるのでネジが折れる心配はありません。

超低床三脚

今回使った雲台は固定ハンドルがT型です。

このハンドルのT部の長さが違うタイプでは、鉄板に固定した際に干渉してしまう恐れがあります。

事前に注意が必要です。

以前、他の雲台でクランプ三脚を自作した時に干渉してしまいました。

それ以来、この雲台を揃えています。

超低床三脚

三脚と雲台を組み合わせても高さはこんな感じ。

ゴリラポッドよりも半分の低さを確保しています。

EOS KISS x2

軽い一眼レフ、EOS Kiss X2でバランスをみます。

レンズを含めて、720g。

超低床三脚コンパクト型の重量が、936g。

重心が上がっても三脚の重量の方が重く、形もバランスのとりやすい正方形なので問題ないはず。

超低床三脚

早速、確認してみます。

水平状態は問題ありませんでした。

そこで、わざと角度を付けてバランスを崩します。

こんな角度で使う場面はありませんが、倒れず安定していました。

超低床三脚

超低床三脚とD7000とバッテリーグリップの組み合わせも確認します。

うん、バッチリです。

倒れる事なく、安定しています。

ゴリラポッド転倒

重さのないゴリラポッドだと、こんな感じに倒れてしまいます。

超低床三脚

自作三脚に満足。

野外でガシガシ使ってみます。