その他機材

昆虫撮影に自作したフラッシュの作例

昆虫撮影にフラッシュは欠かせない機材の一つです。

山や林の暗い環境にも昆虫は多く生息しています。

そんな環境での昆虫撮影に、フラッシュの導入を考えている方も多いのではないでしょうか?

しかし、フラッシュは「暗い環境での撮影に使うだけの機材」ではありません。

高速撮影、日中シンクロなど、

ただ光を補うのが、フラッシュの役割ではありません。

今回は、そんな昆虫撮影におけるフラッシュの話です。

昆虫撮影のフラッシュの役割

光量不足

シジミチョウの交尾

昆虫は小さく、動きも速い野生生物です。

そんな小さな昆虫を撮影には、被写界深度を深め、高速シャッターを切る必要があります。

この、深い被写界深度と高速シャッターに必要となるのが、光なのです。

ただ昆虫が写って喜んでいるうちは、被写界深度や高速シャッターは気になる事はありません。

だって、今のデジタルカメラは優秀ですもん。

昆虫撮影でも、デジタルカメラ任せにしておけば、写せます。

(無難に写っているだけですが。)

しかし、自分の撮影したいイメージを持って昆虫を撮影するのは大変です。

昆虫は「小さくて、動きが速くて、言う事は聞きません」から。

そんな昆虫撮影において、多くの方が最初に触れる問題が「光量不足」なのです。

光量不足をカバーするISO感度調整

ミヤマクワガタの写真

昆虫は必ずしも明るい場所で撮影出来るとは限りません。

モンシロチョウは開けたキャベツ畑で撮影が出来るので、光量不足になる事は少ないです。

(色が白いので、光量オーバーに注意が必要です。)

しかし、カブトムシなどの森や林で撮影する昆虫はどうでしょうか?

(カブトムシやクワガタムシは夜行性ですが、昼間もポイントを見つければ撮影可能です。)

まず、光量が足りません。

雑木林の樹液が出ている場所にカブトムシやクワガタは多いですが、

それらの場所は大抵が日陰です。

そんな日陰で撮影するのに、ISO感度を上げて撮影する方法もあります。

ISO感度を上げてシャッターチャンスを優先

アシナガバチの巣と親ハチの写真

暗い環境でISO感度を上げる意味は「被写界深度を深くするため」よりも、

「シャッタースピードを上げて、シャッターチャンスを優先する」使い方をします。

これは、曇りや雨での撮影も同じです。(昆虫が写せないと話になりません。)

最近のデジタルカメラの常用ISO感度が100~51,200などと、凄まじい数値です。

ただ、私の昆虫撮影でのISO感度上限は、D750で1,600・D7000も1,600までにしています。

なぜなら、ISO感度1,600以上に上げてもイメージした撮影が出来ない場合が多いためです。

昆虫撮影に必要なシャッタースピード

アゲハチョウの飛翔

ブレは写真の大敵です。(ぶれさせてスピード感を出す手法もあります。)

写真雑誌の多くに「手振れを防ぐシャッタースピード=1/焦点距離(秒)」と書いてあります。

しかし、昆虫撮影ではその計算は足りません。

昆虫は小さく、動きが速いので「手振れを防ぐシャッタースピード=1/焦点距離(秒)+1段以上」が理想です。

60mmマクロレンズを使う場合はシャッタースピードが1/125秒は欲しいところです。

手振れ補正機能のあるマクロレンズもありますが、昆虫撮影でマクロレンズを使う場合は過信してはいけません。

昆虫は小さいので、マクロレンズを接写的に使う場合が多いと思いますが、手振れ補正は接写の状況では効果が薄いのです。

昆虫撮影による被写界深度

ヤブキリの画像

マクロレンズは近接撮影が出来るレンズです。

この近接性能のおかげで、小さな昆虫も大きく写す事が出来ます。

しかし、マクロレンズで近接撮影をする場合はピントの薄さに注意をする必要があります。

多くのマクロレンズの開放絞り値はF2.8です。

このF2.8の開放絞りではピントが薄いため、昆虫撮影ではピンボケ写真を連発してしまいます。

(焦点距離が長いレンズほどピントはさらに薄くなります。)

この薄いピントを深くするために、絞りを調整する必要があるのです。

撮影する昆虫や背景の兼ね合い、焦点距離などの状況にもよりますが、基本的にはF8までは絞る必要があると思います。

つまり、開放絞り値F2.8から3段分になります。

薄暗い環境での昆虫撮影に必要な数値

今までの事をふまえると。

[60mmF2.8のマクロレンズで2mの距離から昆虫撮影を楽しむ場合。]

シャッタースピードは1/125秒。

絞りはF8。

ISO感度をオート。

この状態なら無難に昆虫は撮影出来ます。

でも、薄暗い環境はどうでしょうか?

光量の足りない環境で絞りをF8に設定すると、シャッタースピードは1秒や2秒必要になります。

確保したい1/125秒よりも7段近く落ちるわけです。

この7段分をISO感度で補おうとすると、ISO感度が12,800まで上げる必要が出てきます。

使えないISO感度値ではありませんが、ノイズの多い写真になってしまいます。

そこで、ISO感度でも対応しきれない光量不足を補うのに使う機材がフラッシュなのです。

フラッシュは太陽光を補う補助光

カメラにフラッシュを取り付けた画像

ISO感度での対応がしにくい7段の壁。

この段数の多い場合に使用したいのが、フラッシュです。

フラッシュのガイドナンバーで絞りを決める

フラッシュの性能を表す値にガイドナンバーがあります。(G.N.)

この数値を元に計算をするとフラッシュを用いた際の適正露出がわかるのです。

G.N.30で撮影距離が2mとします。

G.N.30÷2m=F15

つまり、ガイドナンバー30のフラッシュを持っていれば、2mの距離での撮影ではF15まで絞る事が出来るのです。

ここまで絞れる光量があれば、あとはカメラの設定やフラッシュの当て方で光量不足への対応が出来るのです。

広角マクロ用に自作したフラッシュ

角マクロ撮影用フラッシュ

私はマクロレンズで撮影するよりも、広角マクロで撮影する手法が好きです。

被写体をアップにして撮影するマクロレンズでは、周囲の環境はわかりません。

「周囲の環境もわかり、かつ、昆虫もある程度大きく写す。」

それが広角マクロ撮影です。

しかし、広角マクロにはあまり、良いフラッシュが見られません。

あるんだけど、高い!!

そこで、接写でも使用出来るように、フラッシュを自作して、作例を撮影してきました。

広角マクロ撮影による作例

広角マクロで撮影している昆虫

曇りの日に樹液にきていたノコギリクワガタの撮影です。

このぐらいの撮影では光が周囲から入るので、フラッシュがなくてもカメラの設定で撮影が出来ます。

広角マクロで撮影している昆虫

川べりでトンボの羽化を発見。

近づいて、周囲の環境を写すのが広角マクロの楽しいところです。

みなさんの身近な環境にも昆虫はたくさん生息しています。

広角マクロで撮影している昆虫

夜の散歩で見つけたスズメガ。

背景の白い壁に浮かび上がる模様が大変美しいですね。

夜の撮影なので、フラッシュは必須です。

しかし、光の当て方には注意が必要です。

強く当てると背景の壁が白く飛んでしまいます。

広角マクロで撮影している昆虫

広角マクロで周囲の環境がわかるように撮影。

曇りでの撮影のため、背景に露出を合わせるとチョウの露出が足りませんでした。

そこで、レンズの横から弱めに光を足してチョウを浮かび上がらせています。

広角マクロで撮影している昆虫

知っていますか?

昆虫も寝るんですよ。

夜間散歩をしているとチョウが寝ている姿を目にする事が出来ます。

夜間は背景が黒く落ちるので、チョウに丁寧に光を当ててあげると上手に撮影出来ます。

まとめ

様々な環境で楽しむ事の出来る昆虫撮影。

フラッシュがないと撮影出来ない状況も多々あります。

カメラシステムはどんどん自動化が進んでいます。

フラッシュの光量調整もカメラが自動でしてくれます。

しかし、カメラの自動は万能ではありません。

フラッシュの扱いも練習あるのみです。

特に野外撮影の状況はまちまちです。

どんな状況にも対応出来るようにフラッシュという機材を導入して、

昆虫撮影を楽しみましょう。