昆虫を生息環境と一緒に撮影したい場面でオススメなレンズが「魚眼レンズ」です。
昆虫撮影をしていると昆虫と生息環境も一緒に撮影したい状況があります。
そういった昆虫撮影では標準レンズや望遠レンズだと画角が狭いので生息環境を含めた撮影は難しくなります。
そこで被写体だけでなく、背景となる周囲の環境が広く入る画角の広いレンズが必要になります。
背景が広く入るレンズといえば、広角レンズです。
画角が広いので、被写体だけでなく、背景を広く写す事が出来ます。
そんな広角レンズよりも広い画角を持ったレンズが魚眼レンズです。
例えば、超広角レンズとなる焦点距離10mm(35mm換算15mm)の画角は109°です。
しかし、大体同じ焦点距離10.5mm(35mm換算15.7mm)の魚眼レンズの画角は180°になります。
ヒトの画角が35~40mmです。
(50mmとの話もありますが、50mmは狭く、何かに集中して見ている状態の画角に近いです。)
ヒトの画角の約5倍の世界を魚眼レンズでは覗く事が出来ます。
魚眼レンズは画角が広いので、被写界深度がすごく深いのも特徴です。
また、魚眼レンズは最短撮影距離が短く、レンズ前面まで昆虫に近づいて撮影する事が出来ます。
(デジタル一眼レフカメラの広角レンズで被写体に寄れるレンズは多くはありません。)
魚眼レンズは被写界深度が深く、近接撮影が可能な昆虫と生息環境を一緒に写すには都合の良いレンズなのです。
魚眼レンズの撮影ポイント
昆虫と背景の距離は出来るだけ離す
魚眼レンズを使った昆虫撮影で一番やりがちな失敗です。
(必ず失敗とは言えません、意図した構図の場合もあります。)
私はAF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G EDを使っています。
解放F値は2.8。
単焦点レンズなので描写はキレがよく、色のヌケも大変素晴らしいです。
(魚眼レンズの中にはズームレンズと単焦点レンズがあります。)
このレンズの描写を生かすには絞り過ぎない撮影が大切になります。
感覚的にはF8の描写が好きです。
さて、ここで絞りをF8で撮影する場合を考えてみます。
私が魚眼レンズで撮影する場合の昆虫との最短撮影距離は大体が0.16M付近。
この距離でF8で撮影すると0.15~0.17M間のピントが合います。
ピントの幅は2㎝足らずです。
つまり、この2㎝以外はボケているのです。
特に0.17Mより先は単焦点レンズの程良いボケが楽しめます。
しかし、背景が昆虫と近いと背景がぼかしきれません。
そのため、背景のゴチャゴチャした感じが出てしまい、昆虫の印象を薄くしてしまいます。
昆虫撮影では森や花畑など、背景にすると複雑な環境が多いです。
そこで、まずは昆虫と背景の距離を離した構図を探し、背景に昆虫<が埋もれないように注意をして下さい。
昆虫に近づく
魚眼レンズは近接撮影が可能です。
AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G EDの場合、最短撮影距離が0.14M。
レンズの先端約3㎝まで近づいて撮影する事が出来ます。
最大撮影倍率も0.2倍(1/5)です。
この2点から、昆虫に近づくのが、魚眼撮影のポイントになります。
昆虫に近づいて撮影を出来れば、昆虫を大きく撮影する事が出来ます。
モンシロチョウやクワガタほどの大きさなら昆虫が背景に埋もれなく撮影が出来ます。
しかし、近づきすぎるのは注意が必要です。
最短撮影距離0.14Mで考えてみます。
まず、0.14Mでの撮影ではピントが大変薄くなります。
0.14Mにピントを合わせると、0.135~0.145Mぐらいしかピントが合っている距離はありません。
つまり、画面のほとんどがボケている写真になってしまいます。
また、この距離まで近づくと昆虫の写る面積が大きすぎて、背景の量が減ってしまいます。
生息環境を写す魚眼レンズなのに、他のレンズと変わらない構図になる可能性があります。
そして案外知られていませんが、この0.14Mの距離ではレンズから近すぎてレンズが自体が陰になり、昆虫を暗くしてしまいます。
撮影距離は初めは0.25Mぐらいがオススメです。
レンズ先端からの距離は15㎝ぐらいになります。
この距離なら、蝶やトンボなど近づきにくい昆虫でも頑張れば近づける距離です。
背景の量も多いので魚眼レンズらしさが楽しめます。
絞りを絞って被写界深度を深く
昆虫の多くが小さいのを忘れてはいけません。
基本的に昆虫撮影では被写界深度を深くするために、絞りを絞り込み、ピントの合っている面を増やし撮影します。
特にマクロレンズのように被写体に近づけるレンズはピントが紙のように薄いので、至近距離で撮影する場合は絞りをF18など絞る必要があります。
魚眼レンズは被写界深度が深い特徴のレンズです。
そのため、昆虫撮影でもF8~16の使用が多いです。
ここまで絞れば昆虫のサイズは被写界深度内に入るので、ピントが合うのです。
背景のボケ具合も丁度いいです。
もし、パーンフォーカスで昆虫撮影をしたい場合はF22まで絞ります。
ピント位置は∞ではなく、0.
AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G EDでは、0.3Mのピント位置でF22まで絞れば、0.2~∞間が被写界深度内に入ります。
魚眼特有の歪みを生かす
魚眼レンズの超広角の秘密は歪みにあります。
通常のレンズでは何枚ものレンズを駆使して消している歪みをあえて残して、180°の世界を見せています。
この歪みが気になるヒトは魚眼レンズは使わない方がいいです。
歪みは消す事は出来ませんが、分かりにくくする事は可能です。
魚眼レンズは周辺部か歪み量が多いので、周辺部に線状のモノを入れないように撮影すると歪みが目立ちにくくなります。
しかし、私は魚眼レンズの歪みが大好きです。
他のレンズでは味わえない面白さがあります。
昆虫撮影でもこの癖を最大限に生かして撮影してみてはいかがでしょうか。
あえて、周辺部に昆虫を配置する構図です。
強烈な歪みがインパクト大な撮影が出来ますよ。
まとめ
マクロレンズのように、誰が撮影しても似た構図ではなく、撮影者の意図を最大限に表現できるのが、魚眼レンズです。
昆虫に近づく技術を身につけ、他人とは違う昆虫撮影を楽しんでみませんか?