広角

広角レンズでユニークな野生動物写真

「野生動物撮影」で、あなたはどんなレンズを使っていますか?

「野生動物撮影」で使用されてるレンズは、基本的に望遠レンズです。焦点距離でいうと、35mm換算で400mm以上のレンズと考えて下さい。

カメラを始めたばかりなら、70-300mmが安くて良い望遠レンズです。しかし、用途を「野生動物撮影」として考えると話は変わります。「野生動物撮影」に70-300mmだと、少し焦点距離が足らないかもしれません。てか、全然足りません。70-300mmだと、日本の「野生動物撮影」は、残念ながら無理です。

レンズの焦点距離は、カメラボディがAPS-Cセンサーだと焦点距離が1.5倍(Nikon)されます。70-300mmの1.5倍なので、105mm-450mm(35mm換算)のレンズとして使えます。

望遠側が450mmなら、400mm以上だからOK。

と、思いましたね。

たしかに400mm以上と言いましたが、「野生動物」と一言に言っても幅広い。あなたが撮影したい「野生動物」って何ですが?野鳥?サル?シカ?クマ?サワガニ?

狙う「野生動物」が決まると、必要な焦点距離が決まります。

先ほどの450mmに話を戻します。

私の経験から、日本で450mmで撮影が出来る野生動物って、人馴れをしているシジュウカラやカルガモぐらいです。日本の野生動物は大変撮影が難しく、出会うだけでも大変です。

個体数の増加が問題となっているシカですら、「撮影」となると難しい。「シカを見た」と「シカを撮影した」は全然違います。

群馬で「野生動物撮影」を続けていると

野生動物を撮影するなら、北海道

本当にこう思います。

北海道は野生動物の宝庫です。

北海道には大学の4年間住んでいましたが、キツネ・シカ・リスに普通に出会えました。ヒトに対する警戒心も薄いので、撮影も簡単。基本的に野生動物との距離が近いです。リス・キツネに5m以内に近づけるのが、北海道。「動物写真家」の移住先として人気な理由がここにあります。

「野生動物」に近づければ、必要な焦点距離も変わります。5mの距離にいるキツネなら、70-200mmF2.8だって撮影可能です。70-200mmF2.8は描写も素晴らしく、ボケも美しい。最強のズームレンズです。私も「動物撮影」で使ってみたい。

でも、現実は無理です。

種類にもよりますが、本州の野生動物の生態や周囲環境を考えると「野生動物撮影」には、600mmは必要だと思います。

今はネットの時代、地域関係なく写真が飛び交っています。野生動物写真も例外ではありません。すごい野生動物写真がどんどん出てくる。しかも、アマチュア写真です。

そんな写真に負けたくない!写真は「勝ち負け」ではありませんが、どうせなら見る人を唸らせる動物写真を撮影したい。

群馬からでも北海道に劣らない写真をどうしたら撮影出来るのか、そんな気持ちで思いついたのが、「広角レンズでの野生動物撮影」です。

近年の野生動物写真事情

カイツブリがアメリカザリガニを捕食する写真

近年はSNSやインターネットの普及により、野生動物の情報は簡単に手に入ります。「珍しい野鳥が出た」となれば、次の日には100万円もするレンズが数々並ぶ風景が作り出されます。

日本の野鳥は警戒心が高く、近づく事はまず出来ません。野鳥への影響の点からも、望遠レンズを使って長距離から、野鳥へのストレス少なく撮影するのは大切です。

でも、多くの人と同じ位置から同じレンズを使って撮影しても、たような写真になるのは目に見えています。

写真コンテストでは、長野県の地獄谷で見られる温泉に浸かるサルの写真を毎年見かけます。年ごとに多少アングルは違いますが、過去に見たことのある写真と感じます。

ひと目で、どこで撮影したかわかる写真なのです。

たしかに、野生のサルの撮影は難しい。里山で見られるサルは警戒心が高いので、近づくと逃げていきます。そう、まず撮影自体が上手くいかないのです。

だから、多くの人が必ずサルに出会える場所に行く。しかも、温泉に浸かるサルは、他の場所にはいません。

でも、「温泉に浸かるサル」がサルの写真の正解とは限りませんよね。

野生動物撮影について

ニホンザルの写真

ニホンザルは北海道を除く、地域に生息しています。じつは見ようと思えば、あなたの県でも見れる野生動物です。

案外、あなたが知らないだけの野生動物は多く生息しています。野生動物の警戒心が高いので出会えないだけ。野生動物はじっくりと観察すれば知らなかった姿を見せてくれます。他人と一緒に眺めているだけでは知れなかった発見があるかもしれません。

多くの人に「野生動物観察」を楽しんで欲しい。

野生動物は地域差があるので観察をしてもすごい写真は撮れないかもしれません。でも、「あなただから撮れた一枚」は可能だと思います。地域差があるからこそです。わざわざ、北海道まで行かなくても、あなたの県にも野生動物は暮らしています。

他県には「見やすい環境」という場所が必ずあります。息抜きに撮影に行くのはいいでしょう。実物を見てみないと知れない事って多いです。

しかし、自分のメインフィールドは身近に作って欲しいと思います。

空いた時間が出来たときに気軽に行けるのがベストです。なぜなら、通わないと野生動物の事はわかりません。その土地ならではの、行動や時間帯、季節があります。

特に野生動物との距離感はまちまちです。

これは失敗をしながら経験を積むしかないと思います。

自分のフィールドを持つ

テンの写真

自分のフィールドを持てば、おのずと撮影する野生動物は決まります。群馬県に住む私には、ヒグマやクジラの撮影は出来ません。可能な大型哺乳類なら、ツキノワグマやカモシカだろう。

でも、「野生動物」と言って、哺乳類と決めつける必要はありません。アオダイショウやミヤマクワガタも「立派な野生動物」です。

自分の撮影出来る範囲で決めればいいのです。ヒグマやクジラの撮影は撮れる人が撮ればいい。

ときたま撮影に出向いたところで、満足の出来る作品が撮れません。だって、その野生動物を知るには、「時間をかけていなさすぎる」のですから。

個性を感じる作品が見たい

アオダイショウの写真

写真雑誌で見かける野生動物の写真は以前に見たことのある感じがします。

私なりに色々と考えてみましたが、「ただ写っているだけ」だからだと思います。多くの写真が「出会える環境に行き、撮影した。」だけ。

撮影者が感じられないのです。

希に目が釘付けになる作品がありますが、そういった作品は個性があります。撮影の状況や撮影時の喜びが写真から伝わってくるのです。

見ている側も嬉しくなれます。

私自身、そういった作品を撮りたいと思いながら山へ通っています。

広角レンズで個性を出す

ウミネコの写真

周囲の環境がわかる野生動物写真は、まだ多くありません。

広角レンズを使える距離まで野生動物に近づけないからです。たしかに哺乳類で広角レンズを使用するのは大変難しい。自動撮影装置や、レリーズを改造して遠距離でカメラを操作するシステムが必要になります。

すでにこのシステムが必要と感じた方は観察がよく出来ています。

あとは、自分の撮りたいイメージと野生動物の行動を照らし合わせて、撮影可能な作品を撮るだけ。

観察が大切な理由がここにあります。

行動がわかれば、今までとは違う撮影が出来る。

観察から得た情報を駆使して、「野生動物撮影」に広角レンズを試してみてはいかがでしょうか?

広角レンズの魅力はなんといっても、映り込む背景の広さです。つまり、生息環境が写るのです。野生動物の生息環境は多種多様で、場所が変われば、環境も変わる。

「生息環境=あなたのフィールド」を忘れてはいけない。

広角レンズによる撮影なら、あなたにしかその作品が撮れない事が、写真を見ればわかります。

見る側はあなたの撮影状況を楽しめる。苦労や喜びを背景から感じられます。

まとめ

20mmF1.8の作例

広角レンズとはどの焦点距離から言うのかは人それぞれです。24mmと感じる人もいれば、35mmと感じる人もいます。

私は「野生動物撮影」では35mm以下を広角レンズに含めたいと思います。なぜなら、35mmは最短撮影距離が短いレンズだからです。

「野生動物撮影」で広角レンズに求めるのは背景の映り込み量です。最短撮影距離の短い35mmなら、撮影方法を工夫すれば十分背景を入れた撮影が可能です。

35mmも十分、魅力的なレンズなのです。

焦点距離が短くても、寄れないレンズは野生動物撮影では扱いにくいです。24mmは広角らしい画角だが、寄れるレンズは少ない。シカほどの大きさの野生動物なら問題ありませんが、ヘビやカエルのサイズだと、小さく写ってしまいます。すると広い背景に埋もれてしまい、撮影した動物を見失ってしまいます。

ただ焦点距離が短いレンズを選ぶだけではいけません。

最短撮影距離・レンズサイズ・価格、大切なところはいっぱいあるので、レンズの勉強もしてみて下さい。