赤外線写真にチャレンジしたいあなたへ
「赤外線写真とは?普通の写真と違うの?モノクロ写真との違いは?どんな写真が撮れるの?市販のカメラで撮れる?必要な機材は?」
こんな疑問に答えます。
- 赤外線撮影のためにカメラを改造【自作】
この記事を書いている私は、野生動物撮影を10年以上。野生動物や自然環境など、市販機材では難しい撮影のために、機材や装置を自作しています。この経験から、赤外線撮影用のカメラを自作しました。
この記事では、撮影した赤外線写真も多数掲載します。
赤外線写真はモノクロ写真です。
しかし、通常のモノクロ写真とは異なり、緑色の草木が白く、青色の空が黒い、独特な雰囲気の写真になります。この見たら忘れられない赤外線写真に憧れた方も多いはず。私もその1人でした。
光について【電磁波】
太陽から降り注ぐ光は、電気と磁気のエネルギーが波状に空間を伝わる電磁波と呼ばれる放射エネルギーの一種です。光の波長の単位はnm(ナノメートル)です。1nmは、10億分の1(10̠‐⁹)mになります。
電磁波は、多くのモノに利用されています。身近なところで、ラジオ・テレビの電波、リモコン、携帯の電波、電子レンジのマイクロ波、暖房機で用いられている赤外線があります。さらに、肌へ悪影響を与える紫外線、レントゲン撮影のX線、核爆弾で放出されるガンマ線、これらも電磁波の仲間です。その電磁波の中で、紫外線と赤外線の間に挟まれ、ヒトの視覚に作用し、波長の長さで異なる色の感覚を引き起こす光が可視光線です。
ヒトの目に見える範囲の電磁波を可視光と言い、可視光の波長は380~780nm。可視光の領域は、電磁波全体のほんの一部です。
可視光線
可視光線は視覚に作用して、色としての感覚を引き起こす電磁波の波長域です。ヒトはこの可視光線の範囲の光を受け取ることにより、色を脳と目で知覚することが出来ます。
電磁波の可視領域は、赤外線と紫外線に挟まれた範囲[380~780nm]と大変狭い範囲なのです。ただ、この可視領域と紫外線・赤外線との領域は曖昧で、参照する資料で多少異なります。可視領域の、400nm付近は短波長で紫、520nm付近は中波長で緑、700nm付近は長波長で赤。特定の波長の光は、特定の色感覚を生じさせます。
可視領域は、生物によって範囲が異なっていることは有名です。ヒトの可視領域は、380~780ですが、ミツバチは紫に寄った短波長の領域の色が見え、長波長の赤は見えないとされています。私たちヒトの見ている景色が普通とは限りません。多くの生き物の中で考えれば、ヒトが稀かもしれませんよ。
自然破壊や環境問題に伴い、太陽の光をエネルギーとする試みが世界各地で盛んですが、可視領域は、太陽光の全エネルギーの内54%を占めています。ちなみに、紫外域が24%、赤外域が22%なので、可視領域が最もエネルギーを含んでいるのです。
赤外線
赤外線は、熱線とも言い、波長は0.7μm~1mmの範囲になります。この範囲のうち、0.7~2.5μmを近赤外線、4~1000μmを遠赤外線と呼びます。[1μm=1000nm]。
デジタルカメラのセンサーは、可視光だけでなく、赤外線も認識します。また、カメラレンズも2,000nm[2μm]の赤外線は通過するので、市販されているカメラでも、赤外線撮影は可能です。
しかし、通常の撮影では、可視光以外の光は必要ありません。むしろ、赤外線は色の調整に悪影響を与えるため、赤外線をセンサーの前でカットしています。そのため、市販されているデジタルカメラでは、赤外線撮影は難しいのです。
【難しい】とは、赤外線を全てカットしきれていない機種なら、市販のデジタルカメラでも、レンズの前に赤外線フィルターを装着することで、赤外線撮影が可能なためです。しかし、その方法だと、センサーに届く赤外線量が少ないので、長時間の撮影を迫られます。三脚が必須になりますが、最も手軽に赤外線写真を楽しめます。
私もその手法で赤外線写真を楽しんでいましたが、もっと明瞭な赤外線撮影を楽しみたくなり、カメラの改造に踏み切りました。
ちなみに紫外線撮影ですが、カメラレンズは紫外線をほとんど吸収してしまうので、センサーに紫外線が届きません。そのため、専用レンズを使用するなど、赤外線撮影よりも難易度が上がります。
赤外線カメラに改造
材料:リコーGRデジタル4
材料2:IRフィルター
作業スタート
まず、GRデジタル4のネジを外して内部を露出させます。
GRデジタル4の場合は上の外付けフラッシュ部の金具を外す必要があります。
ネジはプラスネジなので精密ドライバーがあれば分解できます。
下にもあるネジを外します。
側面にもあるので外します。
隠れてわかりづらいのですが、グリップ下にネジが隠れているので、グリップをめくりネジを外します。
ネジは場所によってネジの長さが違うため、外した場所ごとに別けておくと最後に組み立てやすいです。
ネジを全て外すと背面部を持ち上げながら、外します。
この本体と背面部を外す際には、液晶と本体が配線で繋がっているので、配線を切らないように外す必要があります。
本体をさらに分解すると、GRデジタルのセンサー部にたどり着きます。
センサー部を露出させるには、銀色の金属を3枚外す必要があります。
この金属は手振れ補正用の丸い金属を磁石で止めているので、持ち上げる際には丸い金属をなくさないようにします。
手振れ補正用の小さく丸い金属の紛失に注意
私のGRデジタル4は、このセンサー前面のガラスが汚れたために、使えなくなってしまいました。
位置的にローパスフィルターだと思われます。
エタノールで拭いてみましたが、綺麗には出来ませんでした。
そのため、ガラスを破壊して、ガラスの位置にIRフィルターを貼り付けます。
今回はIR-86という、可視光をカットするフィルターを使いました。
このIRフィルターは薄いのでハサミで切ることが出来ます。
センサーサイズにカットしてセンサー前に貼り付けます。
ゴミが入らないように組み直せば、GRデジタル4赤外線カメラの完成です。
これで、可視光はセンサーまで通らず、赤外線がセンサーに通るようになります。
これで、赤外線カメラの出来上がりです。
ローパスフィルターの変わりにIRフィルターを入れてあるので、ホワイトバランスは狂った状態になります。
JEPG画像も異様な色味になるので、RAWで撮影して色味等を調整して撮影を楽しみます。
赤外線カメラでは、可視光の場合と比べ、ピント位置が微妙に異なるので三脚を使用して撮影を楽しんでいます。
また、私は組み立て時に手振れ補正機構の部品を紛失したため、手振れ補正が効きません。
でも、大丈夫!
手振れ機構が効かなくても撮影は出来ます。
GRデジタル4はマクロ撮影にも強いので、マクロ撮影も出来る赤外線カメラの出来上がりです。
赤外線の作例
ひとまず、近所や赤城山で撮影してみました。
まとめ
IR86は可視光を殆んどカットしてしまうので、楽しむ場合は白黒になります。
赤外線だけでなく、色を少し混ぜた状態で楽しみたい方はIRフィルターの番数を下げる必要があります。